ついに歴史的名作が入荷です。
大阪淡路にある、自転車屋さん「タラウマラ」の店主、土井政司のスタンドDJ PATSATの日記の最新装丁版「平凡な生活」。
過去に自主出版されたコロナ禍に書かれた「PATSATの日記」、「PATSATの日記 volume two」がひとつとなっただけではなく、現在のPATSATの最新日記も追加された豪華版として復活というか、完全なる新しい作品として現れたのが本作であります。
コロナウィルスの世界的パンデミックの影響にて緊急事態宣言がこの国に発令されたのが2020年。
まだあれから5年しか経っていないのですが、5年前のパンデミック中に書かれた、PATSATの日記群は今読むとそれは本当にSFの世界であり、人との接触をしてはいけないと言われていた時期にこれほどに濃厚な人間の関わりがあったことが刻まれた本も他にないと感じます。まさに片隅の文学。
タラウマラの店主でもある土井政司さんは自主制作にて自ら書いた小説を00年代初頭ぐらいからずっと作り続けている、筋金入りの小説家なのですが、文学に救われて、文学に生きる、私が知るなかで本当の小説家であり、彼が見つめる世の中への想いはとても近く感じています。
その後に出た小説群を読んでいくと、このPATSATの作品群が異質だというのとはわかってくるのですが、これほどに純粋な言葉や眼差しが詰まった作品もそうないと感じます。
私も含めですが、この昭和の終わりから平成がどれほどに腐っていたかといったようなことは彼が体験してきた人生にも、私が体験してきた人生にも、それが会話をするからこそ深く話を交換出来るわけなのですけど、どうしようもない、その分その横にあった豊かな文化に救われてきたことを同時に知ることとなるわけです。
それが実ったのかもしれないと、そのよくわからない果実の味はこれほどにも。
私は文章を書くということを、素人ながら作品にしたいと思えたのは今作の作者でもある土井政司さんの生き様や作品群を身近に触れたからだと思っています。
タラウマラと土井政司さんの活動を通して、ライナーや言葉を紡ぎ文章とする色々な書き物を書かせてもらって、文章の楽しさや辛さを教えてもらったし、あの場所で展開する本の延長上でもある物語が他者から紡がれて、それがPATSATがバリバリ咀嚼して、次へ繋がっていく、この過程から、文学や文章は生まれるということを直で感じさせてもらったこと、あの場所で笑った分だけ文章という大便を垂れ流そうとなった理由です。
心動かされるものはそれほどにも美しいものではないねんでおのちんといつも語りかけてくる。
本物の「文字」や「文章」に触れたときに音楽と人との距離は美しいものだったと初めて感じたのです。
その場所で感じることは純朴でいることの辛さや、人の交差が織りなす感情、人間とはなんと豊かだと感じれた特別な時間でした。
今や空いている時間は音楽やるより文章を書いているようなそんな人生へと変貌しているのだから、これはほんとうの気持ちなのだと思います。大推薦版。
著者 DJ PATSAT
解説 小幡玲央
発行所 タラウマラ
装丁・本文デザイン 呉松慶吾
カバー印刷 マノ製作所
印刷・製本 イニュニック
375頁 文庫サイズ